天才がどんどん生まれてくる組織
- 作者: 齋藤孝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/05/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (12件) を見る
「いかにも文系の先生が書いた本だね」
と、読後、開口一番に夫が言った。
おなじみ齋藤評伝スタイルの、これは組織編。
その組織の中に理化学研究所が登場するのだけど、友人が理研でポスドクをしていたり、夫自身も時々共同研究とか何とか言って出向いていく機会があるので、「理研のこと、書いてるよ」と勧めてみた。
理研のこと書いてて、仁科先生に触れてないなんて・・・等と意味不明*1なことをぶつぶつ呟きながらも、結構引き込まれて本気で読んでるじゃない、と思っていたところに、前掲の発言。
その後に続いた彼の感想が私にとってはとても新鮮だったので、今回は、夫ベースで書いてみる。
曰く。
理系の人間は、ある目的に向かって、どうしたらそこに辿り着くのかを試行錯誤するというスタイルをとっている。つまり未来に向かって進もうとしている。
反対に、文系の人間は、既に成果、結果が上がっていることに対して分析することが主で、過去を扱うことが得意。そこから学んだことを未来へのアプローチへ、という意味で未来を向いているのかも知れないけど、基本的に向き合っているのは過去の出来事。
だから齋藤孝は、成功例や成功者を列挙して、分析するのは本当に上手だけど、それはあくまでも結果論に過ぎない。
そこから学ぶことは確かにあるけれど、成功への明確な解は提示されていない。
もし、理系の人間がこの手の成功へのハウツーもののような本を書くとしても「○○すれば成功する」「これさえやれば大丈夫」という切り口では書かないだろう。
「こうすれば、確実に失敗する」という経験則は存在するけれど。
・・・と、掻い摘んだら、こんなところ。
漠然と抱いていた、「言っていることは分かるんだけど、今ひとつ実践的ではない気がする」という手応えのなさの正体を言い当てられたようで、ほほぉと感心した次第ですが、これは赤烏帽子なんでしょうか。
夫の意見を踏まえた上で、というか、全く無視しているかも知れない文系の私の感想としては、確かに成功への明確な解は示されていないけれど、才能が次々顕れる素地というのは、ユニークな着眼点だし、指導者や組織をマネジメントする立場にある人が読むには、大いに意義のある本だと言えます。
もう一つ夫が言うには「結局のところ、本当の天才は、どんな環境、状況下でも天才なんだ」そうですが、これについても、この本の中では偶然だけじゃない必然の要素としての「組織」が書かれております。
そしてその「組織」の力を意識するかしないかで、将来の展望もかなり変わって来ると思うので、過去から学ぶ温故知新の心を侮ってはいけない、と思う思考回路が、文系脳なのかしらん。
*1:私にとって、ということね。知ってる人は膝を打つのかも