(1)どっどど どどうど 雨ニモマケズ / 宮沢賢治 子ども版 声に出して読みたい日本語

 娘の本棚を見ていたら、齋藤様の本がありました。しかも禁断の書(子ども版)そう言えば夏に実家から届いた小包の中に入っていたなぁと思い出しました。本好きの母は孫娘の為に、時々絵本を送ってきます。その想いを蔑ろにする親不孝娘であり、ダメ母。ごめんなさい。


 手にとって表紙を見ていると、娘が「あ、どっどどどどうどのご本!」と寄ってきた。この頃文字に興味を持っているようだけど、体系立てて教えない無精母のせいで、自分の名前の字など限られた字しか読めない3歳児。「と」は読めないはずだし、ましてや濁音のことなんて知らない。もちろん、この本を読み聞かせたことはない。
 「どうして分かるの?」と聞くと「だって萬斎さんが言ってたよ」とのこと。


 「にほんごであそぼ」の中で野村萬斎氏が朗読(というか身体表現)する時に出てきていた字面を覚えていたのだろう。この頃は余り「風の又三郎」は扱っていないようなので、少し前の記憶だと思う。子どもの記憶力って侮れない。


 せっかくなので「風の又三郎」を読んで聞かせる。

どっどど どどうど どどうど どどう、
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう


 すると同じリズムで娘も付いてくる。読んでいる訳ではもちろんない。そして最後の「どどう」が終わると、「ぴゅー」と言って後ろに跳んでいってしまった。これは萬斎氏のパフォーマンスの真似。
 今までずっと「にほんごであそぼ」を見せて来たけれど、あくまでも私の趣味に付き合わせていただけで、娘にとっては寧ろその後に始まる「いないいないばあっ」の方が本命だったので、さして期待もしていなかった。一緒になってやってる様子もなかったし。
 だけど、娘の身体(頭ではないだろう、多分)にはするっと宮沢賢治の一節が入っているんだなぁと感心した。


 子どもの頃に入ったものってなかなか消えないものだ。
 小学校1年生の頃、中国からの視察団を歓迎するために覚えさせられた中国語の歌を未だに歌えるもの。意味なんて分からなかったけど、今になって音から朧気ながら察するに、天安門を称える歌だと思う。
 ウォウアイベイジンテンアンメンで始まるのだけど、多分「我愛北京天安門」ではないのかなぁと思う。中国人に会ったら聞いてみたいと思っているのだけど、天安門って微妙。


 娘がもっと成長して再び宮沢賢治に出会った時に、懐かしさと共に自分の中に既に在る宮沢賢治を味わってほしいなと思う。齋藤様の蒔いた種が実を結ぶ瞬間。人任せじゃなくて私がダラ母返上しなきゃなぁ、と自戒を込めて。