人生讃歌―愉しく自由に美しく、又のびやかに


人生讃歌―愉しく自由に美しく、又のびやかに

人生讃歌―愉しく自由に美しく、又のびやかに



 堪能致しました。
 美輪明宏様との共著となっておりますが、内容的には美輪明宏談/齋藤孝解説、といった方が正確でしょう。
 美輪様のご高説がのびやかに展開され、齋藤様がお話しになることは、その補足だったり或いはそのままをなぞるだけであったり。
 美輪様のオーラに圧倒されたのか、最初から齋藤様が聞き役に徹するおつもりだったのか分かりませんが、齋藤様ファンには物足りない一冊、いいえ!とんでもない。


 美輪様のお言葉の数々がとにかく珠玉なのです。
 読んでいて美輪様のたおやかな語り口調まで伝わってくるようです。と言って、決して美しい語彙ばかりを並べ立てていらっしゃるわけではありません。ここが美輪様の懐の広さだと思うのですが、語彙の振り幅がものすごく豊かなのです。


 唇に乗せてうっとり味わいたいような言葉*1から、場末のキャバレーの裏口に転がっていそうな猥雑で下賤な言葉までが、実に的確に含蓄深く美輪様のお言葉にあしらわれているのです。
 それらが全てニュートラルで偏見やバイアスが皆無なので、通常規制の対象になるような単語でも美輪様限定で解禁しても良いとすら思えます。


 齋藤様が心酔するのも宜なり、と言うことで齋藤様理解のためにも是非読んでおきたい一冊。
 そればかりではありません。
 美輪様との関わりにおいて、齋藤様が担うべき役割についても思うところがございました。


 この本のまえがきにても、先日の「世界一受けたい授業」での太鼓判口上にても齋藤様を褒め称えていらした美輪様。
 浅薄な私は、これらを美輪様の慈愛に満ちたリップサービスなのだろうと解釈しておりましたが、そんな浅いものではございません。


 美輪様が齋藤様を評価しているのは、教育者としてより寧ろ鑑賞者としてなのではないでしょうか。ご自身の発信するメッセージ(演劇、歌、著書含め)を正確に捉え、鑑賞する目の確かさをこそ、褒め称えているように感じられます。
 そしてその鑑賞眼と共に、文化や伝統の伝承を教育の命題と掲げて、世の中に訴えようとしている姿勢を支持されているのでしょう。


 ここで大胆な仮説。美輪様はご自身の語り部として齋藤様に白羽の矢を立てられたのではないでしょうか。
 三島由紀夫に愛され、寺山修司に見込まれた*2美輪様が、彼らを始め日本の文化を担ってきた先達の志を継承し、語り継いで来られたように、齋藤様に美輪明宏の魂を託そうとなさっておいでなのではないかと。
 齋藤様の多忙の身を案じつつ、檄を飛ばす。美輪様の慈しむようなその眼差しには期待と信頼感が溢れているかのようです。
 

 荷はとてつもなく大きく重いものでございますが、齋藤様ならと見込まれてのこと、ここは一つラブ・アフェアも辞さない構えで。
 美輪様、よしなに。

*1:日本の美しい色について語る行「青磁色、群青色、朱鷺色、鶸色、水浅葱、古代紫」が最も好きです

*2:余りよく知らないけど、イメージ