偏愛マップ―キラいな人がいなくなる コミュニケーション・メソッド

 偏愛。偏って愛するもの。
 私の解釈で合っておりました。と言うより「偏愛」という言葉自体は普遍的意義を越えるものではなく、それをマップにしたというところが、齋藤メソッドなわけですね。
 偏愛解禁。はい、偏愛マップ―キラいな人がいなくなる コミュニケーション・メソッド読了です。


 あとがきでも自画自賛されている通り(なんだか齋藤様のあとがきにはこのパターン多い気がします。そういう自信満々でおかしな謙遜しないところが素敵)偏愛マップにはかなりの自信をお持ちのようで、他の著書や対談などでもよく話題にされているので、初めて読んだような気がしませんでした。


 ただ目新しいと感じたのは、例として齋藤様作成の五人の偏愛マップ
 岡本太郎向田邦子寺山修司ジョン・レノン坂口安吾という癖のある偏愛の達人達の著書や語録から、他者(この場合齋藤様)がマップを作成するというもの。
 このアプローチは、人物研究や作品研究にも生かせるので、コミュニケーションツール以外での可能性を更に広げられるなぁと思いました。
 人文分野の学生の皆さま、レポートや演習、卒論などに行き詰まったら、一度目先を変えて偏愛マップいかがでしょ。


 でも最後の最後まで期待して、あとがきの後ろに付録として付いてないかな?と思ったら参考文献だったのでがっかりしたのは、齋藤様ご自身の偏愛マップ
 提唱者自らのマップ、是非とも欲しいところです。できれば、「さだまさし」時代からの偏愛の変遷も添えて。
 じゃなきゃ、説得力ないじゃないですか。というより、ただの興味本位なのですけれど。


 いや、やっぱり齋藤様の偏愛マップ見たさの購買層だって確実に存在すると思うのですよ。偏愛の対象者の偏愛を知りたいと思う心が、更なる偏愛を呼ぶのですから。これこそ偏愛の拡大再生産。
 そこで、NTT出版に期待したい第二弾。「偏愛マップを偏愛する」
 各界の著名人に依頼して、思い思いの偏愛マップを作ってもらい、一冊丸ごと偏愛マップだらけの本。売れると思うんだけどなぁ。


 それにしても五人のラインナップ、他の四人についてはなんとなく分かるのですが、坂口安吾が入ってくるってのが、いかにも唐突。
 いや待てよ。これこそ齋藤様の偏愛の賜?
 つまり他人の偏愛マップに仮託して、自分の偏愛をアピールという更にワンランク上の高等技術なのでしょうか。感服。