古希

 とんでもない御仁に見込まれたものです。
 紫の履歴書を読み終わったのですけれど。
 これが、美輪明宏様三十三歳までの半生記*1だというのですから、その人生の重厚感と威圧感たるや出始めの頃のドルビーサラウンドシステムもかくやとばかり。(知らないけど。言い得て妙でもないし。)


 私、今三十二なんですけど、ここからの一年でこれだけの経験値と男遍歴は無理。って何に向かおうとしている?私。
 十代の丸山少年(美輪様御本名)に負けてる、男の数*2
 大きく挫折もしてないし、地位や名声にも野望を抱かず、慎ましく生きてきたぺらっぺらな人生。振り幅、狭。この辺りについてはああ正負の法則に詳しいのでしょうね。読まなくては。


 これまで美輪明宏という人について、昔「それいけココロジー」のモニタリングビデオに出ていたとか、歴代恋からギャルから人気絶大(さんま談)くらいしか知らなかった*3私ですが、それでも思わず敬称を以て崇めてしまうオーラが、ご自身の人生に裏打ちされたものだったということをはっきりと認識した次第です。


 翻って齋藤様。
 主義主張に芯は通っているものの、経験値の不足を名著や先達の言葉の引用で補う分、相手に与えるインパクトはどうしても弱くなってしまうと、認めざるを得ません。
 映画「グッド・ウィルハンティング」の中で、ロビン・ウィリアムズが天涯孤独のマット・デイモンに対して「君の気持ちは分かるよ、先週孤児の物語を読んだからね、って言われたらどう思う?」というセリフ*4があるのですが、まさにそれ。と、引用の否定を引用を以てするという茶番。私も同じ穴の狢。畏れ多くも。
 


 自らの人生を投影した言葉を紡ぐ、圧倒的な存在感の美輪様の前では、余りにも分が悪いけれど、その美輪様が天才と称えてくださることもまた事実。
 美輪様との御交友の中から得られる財も大きいことでしょう。
 ここは、美輪様の真贋を見極める目の確かさを信じ、ややおからかいの遊び心があることも含めおきながら、一層の齋藤様の精進を願うばかりです。
 鬼に金棒、義経に弁慶、ヒガシに森光子。

*1:こないだテレビの人生相談で「今年七十になるのよ、普通の男だったら汚いじいさんよ」と仰っておいででしたので、実質三分の一生記くらいなんでしょう

*2:まだ蟷螂の斧をむなしく振り上げようとする三十路の女。子持ち

*3:そう言えば、美輪様が演技されているのを見るのは「義経」が初めてかも知れないです

*4:公開当時一度見たきりなので、全くのうろ覚えにて、お目こぼしを