最初から「声に出して」をテキストに持ってこなかった番組企画者の勝利。
 齋藤孝を起用する際に、喉から手が出るほど使いたいのはかの大ベストセラー、齋藤様を現在のように出版界の寵児たらしめた「声に出して読みたい日本語」に違いありません。そこをぐっとぐっと堪えて、「段取り力」「腰力」「三色ボールペン」で着実に番組も出演者も視聴者も耕した後、満を持しての登場です。


 そして以前にピンクの似合う男は良い等と嘯いた、その舌の根も乾かぬ・・・いや、逐電中に十分乾ききっているかも知れないけれど、黒の「渾身」Tシャツは今までのどんな装いよりもお似合いで、やっぱりあれが齋藤様の戦闘服なのねと何度もテレビ画面に向かって頷いたのでありました。


 番組企画で急遽集められた齋藤メソッド春期特別講義の子ども達の出番はあそこだけかい、とか、高嶋弟の友人のセンスはいかがなものか、とか突っ込みどころは多々あれど、一時間目の金田一先生の授業も含めて、国語スペシャル、かなりの見応えでございました。


 何より、今回のキャスティングが冴えていたのは田島令子さんの起用。以前にも齋藤様の授業の折に出演されていた気がしますが、音読の授業にこそ必要な方!私たちの世代で田島令子さんというと、やっぱりオスカル・フランソワなのです。あの凛とした声。もうテキストが「サーカス」(中原中也)であろうと、「ゆやゆよーん」が断頭台の露と消えたマリー・アントワネットの金色の巻き毛(ロココ調)が風に揺れる音にしか聞こえないのです。
 ああ、もし贅沢を言えるならぜひとも志垣太郎も呼んで欲しかった。「マクベス」でもいいからお二人で読んで欲しかった。無念。
 齋藤様のお薦めブックリストに「ベルサイユのばら」は入ってなかったのでしたっけ?*1


 久しぶりにご尊顔を拝した*2のに別のところでしかも女性に対して盛り上がってしまいましたが、それくらい申し分なく充実した内容だった、ということで。


 あ、一つ二つ苦言を呈すなら、あの齋藤様のイラストはないっすよね。誰だ、あの暑苦しいメガネの男は。全国の齋藤様ファンから苦情殺到でしょう。終始にこやかだった齋藤様ですが、授業の間ずっと、後ろの画面に映し出されていたあのイラストにはかなりムッとしておられたのではないでしょうか。もしくは夜、家に帰ってから泣いてるよ、多分。


 それともう一つ。日本語「息」「活」「粋」―7時間ぶっとおしトーク・ライブ!言葉のおしゃれデスマッチ!にて齋藤様ご自身も否定的だったテロップ、「世界一受けたい授業」は特に多すぎです。好きな言葉ではないですがぴったりなので敢えて使いましょう。うざすぎ。
 画面両上端に、「○時間目 ○○先生」「本日のテーマ」のようなのが固定でずっとある上に、話し言葉をテロップで垂れ流し、それが二行に及ぶ時には、画面の3分の2をテロップが占めるという放送事故のような事態になっています。
 それに文字というのはどうしても脳が勝手に重要な情報と判断して、注目してしまうんだ。初見だとほとんど齋藤様を鑑賞できないから、顔に主眼を置いて二度見しなきゃいけないんだよぉぉぉ。どっちにしろ繰り返して見るけどさ。
 日テレ、テロップ先駆者としてもう引けないところまで来ちゃってるんでしょうか。なんとかしてくださーい。

*1:後に確認。ありませんでした

*2:今週もとくダネ!金曜日は石田氏でした