三色ボールペンで読む日本語
- 作者: 斎藤孝
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/03/26
- メディア: 単行本
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齋藤様の著作を読んでいると、しばしばデジャ・ビュに似た感覚に襲われることがあるが、多くの場合それは既視感ではなく、既読感だ。著作に限らず、テレビ番組や対談での発言でも「あ、齋藤用語」と思うことがよくある。
その中でも特に頻出なのが、偏愛マップとこの三色ボールペン。
もうすっかりおなじみになっていて、今さら読まなくてもいいような気がするものの、全てにおいて基本は大事ですから。
では基本中の基本。
「重要だと思うところ」に赤
「やや重要だと思うところ」に青
「自分が面白いと思ったところ」に緑
と使い分けて、線を引きながら本を読む。
シンプルに言うとこれだけのこと。詳しい説明、その効用については、1/15放送の「世界一受けたい授業」で分かり易くまとめてあるので、興味のある方はこちらをご覧ください。
さて、繰り返し提唱している三色ボールペン活用法について、一冊にまとめるというのですから、俄然気合いも入るというもの。この本は、その気合いが行間から頁間から、がしがし感じられます。
「線を引くには勇気がいる」「線を引くことは一つの『賭け』だ」「大胆に」「思い切って」と、なんだか大仰にものすごいことをやってのけなくてはならないような、アグレッシブな言葉が並んでいる。
「さあ、勇気を振り絞って、準備はいいか?ではまず、直立不動の姿勢から指先までピンと伸ばした両手を躊躇することなく、前方に振り上げ、その勢いのままに天まで届けとばかりに頭上に高々と伸ばしてくれ。大丈夫か、難しいかも知れないが、思い切って!その時に肺いっぱいに新鮮な空気を吸って。そうそう、臍下丹田にグッと力を込めるんだ。伸ばした手は一度静止させて、次は深々と息を吐きながら静謐に下ろしつつ、元の直立の姿勢に戻るんだ。それと同時に肺の中の空気を吐ききるようにうまくタイミングを計りながら。いいか、自信を持って最後まで気を抜くんじゃないぞ」・・・と言われながらやってみたのが、結局深呼吸かいっっっ、というような。
たかだか線を引くというそれだけのことを、ここまで仰々しく言われると、なんだか「ジョジョの奇妙な冒険」を読んでいるような気になってくる。
そこまで大仰なのは、今まで他のテーマの前座を繰り返し努めた「三色ボールペン」がいよいよ真打!という気合いもあるだろうし、そこまで勢い付けて背中を押さないと読者が実際に線を引く行為にまで至らないというのもあるんだろう。
・・・かく言う私も、これだけの崇拝者でありながら、線引いておりません。
やっぱり大袈裟なまでの鼓舞は必要と言うことか。実際三色ボールペン持ったら、武者震いしそうっす。
実践はともかく(いや、本当はそれが大事なんだけど)本書で一番の緑ポイントはここ。
齋藤様によると、ボールペンの色を切り替えるときのカチカチという音で脳が「主観」と「客観」の切替を明確に意識するということなのだが、それに補足した次の一文。
言うまでもないことだが、図書館など音を立てると迷惑な場所では、切り替えのとき、上がってくる色の方をもう一本の指でおさえて音を立てないようにするマナーが大切だ。
大人の気配り、素晴らしい!やっぱり齋藤様!!ということではない。きっと、これは三色ボールペン普及活動の中で新たに加えられた文言なんだろうと拝察される。
恐らく、自分だけで実践していた頃、齋藤様にとってはこんなことは当たり前過ぎて、意識してやってなどいなかっただろう。
学生や子どもたち(時にはイイ大人)に勧める中で、言われるがままに所構わず傍若無人にカチカチカチカチやる輩が出て来て、「こんなことまで教わらなきゃならないのか」という呆れを経て「世の中にはいろんな人がいる」の悟りを得、広く世に普及させるに当たっては、是非言い添えておかなくては行けない注意事項になったんだろうなぁ・・・という舞台裏が偲ばれる。って勝手な憶測ですが、なんか小市民的でいいじゃないですか。