女性に必要な12の力

女性に必要な12の力

女性に必要な12の力


 「婦人画報」の連載「声に出して誉めたいこの人の『素敵のヒント』(2006年1月号を以て終了)をまとめた本。
 タイトル通り12人の女性(含、美輪先生)との対談集なのだけど、同じようなシチュエーションで対談していても、12者12様。対談のカラーって変わるものなのだなぁ、その都度齋藤様の役回りも変わってるし。
 と一気に読むことで全体像が見えたというのが唯一の単行本化での利点で、あとは連載中のページを切り抜いて12人分スクラップしておいた方が余程お得感があるかも。


 単行本化に際しての意気込みや工夫が余り感じられなくて、とりあえず連載の原稿にまえがきとあとがきを付けて体裁を整えてみました、みたいに見える。
 例えば対談後のゲスト側からの感想を、齋藤様の締めと対比させるような形で加えるとか、「今月の孝クン」*1写真館をピーコのファッションチェック付きで巻末付録にするとか、なにかしらプラスαがないと、なかなか食指は動かないけどな。
 せっかくあとがきで「この雑誌は撮影に熱心で」と齋藤様自身が仰っているんだから、その特性を活かさなくては!白黒写真でパワーダウンしてどうするのさ。


 でもそんな「お得」とか「限定」とかそういう巷間の読者対象みたいなサービスは敢えて排除して、あくまでも婦人画報御用達のマダムクオリティを保持したかったというのなら、ははーっ!とひれ伏して、婦人画報様、よしなに。と申しあげる他、庶民の取り得る術はございませんが。


 一通りぐだぐだ言ったところで、ここは一つ前述の利点を積極的に膨らましてみましょう。
 相手に応じて役回りを器用に変えていく見事なホストとしての手腕を発揮した齋藤様。その技は大きく4パターンに分類できます。


 まず一つ目は、黒柳徹子さんに顕著な「お接待持ち上げ型」。
 大御所をとにかく誉め上げます。読んでる方が冷や冷やする位、大袈裟に過剰に誉めまくりです。
 誉め上げられてうっとりして思考停止状態なゲスト大満足ご満悦で大団円。孝クン、任務終了。


 二つ目は、美輪明宏先生に代表される「懐入り込み型」。
 大御所相手であることは「お接待型」と同じなのですが、ちょっとやそっと誉めた位じゃ陥落出来ない手強い相手の場合、攻めることは止め、ひたすらに相手の懐にすっぽり収まって愛でられる対象を目指します。
 相手が孝クンを認め、懐入りを許すところで任務終了。


 三つ目は、夏木マリさんが最も分かり易い「意気投合型」。
 比較的世代が近く、スタンスが似ていることから、お互いに共通点を見つけ合い、話がどんどん展開して行きます。
 ゲスト・ホストという関係が一番曖昧で、最も「対談」らしい対談。相手が逆に齋藤クンの話を引き出すようなところも見られ、齋藤ファンには最も読み応えがあると言えるでしょう。
 最後、「この後、飲みに行きましょう〜」と肩組んで対談場所を後にしながら任務続行。


 そして、四つ目は、倍賞千恵子さんらの…工夫のないネーミングで申し訳ないけど「女優型」。
 女優さんはやはり自分が注目される存在であることに加え、インタビューされることに慣れすぎているため、「対談」する気なんか端っからありません。聞かれたことに答えるのみです。だから話を発展、展開させる気も場を盛り上げる気も皆無ですし、齋藤孝になんか全く興味ありません。もちろん女優ですからそれを露骨に出したりはしないけれど。齋藤さんのお仕事はただ質問すること、話を聞くこと。that's all。
 ひたすらインタビュアーに徹する齋藤さんと女優。そこから生まれる関係性は極めて希薄です。恐らく齋藤様自身確実な手応えを感じられないままにそつなく対談終了。


 連載を読んでいる時は、連載当初のテンションがそうさせているのかと思った黒柳徹子の回であったり、お疲れ気味で中だるみなのかと思った富司純子の回であったりしましたが、それぞれ相手に合わせて攻め方、切り口を自在に変える対談の名手ならではの技だったのですね。

 対談集としてはよく出来ていて、人選と言い齋藤様の話の引き出し方の妙と言い、連載を読んでいないまっさらな状態の人が読むにはお薦めできると思います。
 例で挙げた以外の対談相手が、それぞれどのパターンに当てはまるのか考えながら読んでみるのもまた一興かと。

*1:正確には「今月の齋藤さん」明らかに着られてる感の強い服&毎度奇天烈な眼鏡で話題を呼んだマダム目線で齋藤様を弄ぶファッションチェックコーナー