新年度に寄せて
週末に娘が熱を出した。
年中クラスに進級して、新しい先生、新しいお友達、新しい教室という慣れない環境の中、幼いなりにストレスを抱えていたのだろう。
A判サイズの世界から、再びB判サイズの世界に戻ってきたというようなことを書いてから一年、幼稚園母五カ年計画*1も二巡目の春を迎えた。
この一年で思い知ったのは、小学校以降のことは知らないけれど、幼稚園ってとこは、入園するのは子どもだけじゃない、母親もセットで各種行事、経験に組み込まれているということ。少なくともうちの園に関しては。
まず「新年度」という概念。これは、未就園児までの間は専業主婦にはないものだった。
入園式という節目だった昨年は、もちろん大きな意味を持つ季節だったのに違いないけれど、単なる進級でしかない今年に至っても、やはり子どもにとってと同じく、新しい先生、新しいお友達、新しい教室、という新環境は、もう一つ「新年度役員選出」という子どもを持ったからには避けて通れない関門も加えて、母親達の前に大きく立ち塞がる。とは言っても、下に未就園児を抱える私にとってはまだ対岸の火事で、彼が入園する来年以降こそが正念場*2となるわけだけれど。
そんな幼稚園母雑感から、一気に時を遡り学生時代に思いを馳せてみても、この季節は苦手だった。
人見知り。自分から話しかけるのが好きじゃない。笑顔で自己紹介をし合い、気軽に仲良くなっていく周りの級友達を、人付き合いに長けた器用な人たちなんだと羨ましく眺めては、読みたくもない文庫本に目を向けていた―ってなんか青臭い似非文学少女って感じでやだな。
ま、それはともかく。
当時は、思春期特有の屈折した自己愛で、自分は特別人付き合いが苦手なんだと思い込んでいたけれど、最近になって分かったのは、人付き合いが得意だと自分で思っている人なんて殆どいないってことだ。
誰からも好かれていて交際範囲も広い魅力的な人も、自称人見知りだったり引っ込み思案だったりする。
はきはきと明朗且つ爽やかに自己紹介して、自信たっぷりに見えていた人も、後に「緊張して、何しゃべってるか分からなかった」と述懐したりする。
かく言う私も、この間「初対面の人とでも気さくに話せて、誰とでも仲良くなれる人」と言われて本当に驚いた。初めての人と話す度に胃が痛くなるってのに。
でも、そういうことなんだ。
誰だって、緊張してるし迷ってるし悩んでる。如才なく見える人だって、試行錯誤の連続なんだ。それ程、コミュニケーションと言うのは奥が深くて、私たちにとって重要なことなんだ。
そして、この一年の経験を通じて潜在的な齋藤孝の影響力がどれだけ大きかったかと言うこともしみじみ感じる。
趣味や仕事を通じてではない、所謂「ママ友」という付き合いの形は、言ってみれば、それまで培って来たコミュニケーション力を試される戦場みたいなものだ。
場の空気を読む「文脈力」、会話の中での適切な「コメント力」、必要に応じての「質問力」、その他総じての「コミュニケーション力」を意識することで、いくつの戦いを制して来たことか。…戦い?…制す?
えへ。ちょっと大仰に述べてみました。
しかしながら、新しいコミュニケーションが作られていくその様子を、ただ傍観して逃避するだけだった学生時代から、前述の「誰とでも仲良くなれる人」という評価を頂けるまでの成長の過程には、経験値の他に齋藤孝効果を感じないではいられない。
ビバ!齋藤孝。
慣れない環境で彷徨っている、コミュニケーション力の戦士達に栄光あれ。
- 作者: 齋藤孝
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/10/20
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