報道ステーション 4/28 OA


 それは、クロサギの第三回を見終わって、前二回分よりはちょっとましだったのだろうか?なんてぼんやり思っていた時。唐突に夫が口を開いた。
 「そう言えば、報道ステーションにあの人出てたよ、えーと、さいとう―、えっと、さいとう、あの、さいとう…たかを!」
 ボケ用のさいとうたかを先生の名前を忘れちゃったなら素直に言おう、齋藤孝。と、冷静に指摘できるはずもなく、「え?出てたの?今日?今?え、え?!」と焦りまくる私に、じゃーん!とビデオのリモコンを差し出す夫。
 そうそう、この人は、文脈力があるというのか段取り力に長じているというのか、ま、要するに気の利く男なんだ。
 これまでに何度、「見逃したっっっ!!」と思った番組が、彼の機転で救われたことか。感謝!
 

 カメレオン並みに「目の前の動くもの」に滅法弱い私は、「西遊記」で露出が増えれば香取に焦がれ、今は定石通りゴロちゃんを見直したりしている。
 裏を返せば、典型的な去る者は日々に疎し体質の遠距離恋愛には全く向かないタイプなので、この飢餓的齋藤不足をどう乗り越えたらいいもんだかなぁ…と、とぼとぼ考えつつ、日々の忙しさも言い訳にしながら、本を読むことからも遠ざかっていたこの頃。
 

 そんな怠惰な日常に久しぶりの動く齋藤孝
 いいですねー、もう四の五の言わなくてもいいよね、と思う程。
 あー齋藤クンが動いてる、しゃべってる〜。言わなくてもいいって言うより、茶々入れてる間があったら凝視してたい感じ。全体のバランス無視して前の部分だけ妙に立ち上がった髪の毛も、表情に覇気はないのになぜか通る半かすれの甲高い声も、いいいい。
 すっごく真剣に画面に食い入るように見ていたのに、さて、なんか書こうと思ったら、肝心のコメント内容はさっぱり覚えてなくて、私の意識がいかにサイトウタカシそのものに集中していたかと思うと自分がいじらしくさえなってきたけれど、それじゃ話にならないので慌ててビデオ再チェック。


 えー(何事もなかったかのように)それぞれのニュースにコメントしているのだけど、本日のメインは、やはり教育基本法改正案への添削ショー!!に尽きましょう。
 以前の出演時にも思ったのだけど、報道ステーション齋藤孝の使い方は巧い。そしてキャスター古舘氏による活かし方も良い。
 報道番組の中でのコメンテーターという役割は一緒なのに、とくダネ!でのぐずぐずしたもどかしさはなく、例え発言回数や画面に映し出される時間が少なくても、しっかり齋藤孝を堪能した充実感が得られる。
 今回の教育基本法改正案のニュースなんて、まさに打ってつけ。というより、他局は齋藤孝なしで、どう報じたんだ。素材まんまでいいなら、NHKだけで充分だろうに。


 で、水を得た魚の齋藤クンは、魚心あれば水心の古舘クン達を前に颯爽と添削開始。
 まな板に載せられたのは、こちら。

教育基本法改正案(第一章第二条―五)
 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

 伝わりにくいのは承知の上で、赤ペン先生齋藤クンを再現してみましょー。


古舘;ここはひとつご専門の齋藤先生に聞きたいんですけれども、この文章、どういう風に齋藤さんご覧になりますか?

<以下ずっと齋藤>

 うーん、ま、ひと言で言って、折衷案を作り過ぎてですね、建て増し過ぎて、ちょっと意味がとりにくくなっているという気持ちは率直に受けますね。
 多分、自民党が「国を愛する」ってしたか「愛国心」ってしたかってところに、ま、それを柔らかくするためにいろんなものを付け加えたと言うことだと思うんですが、

 ま、これ(ボードを指しながら)いいですか?(赤ペンを携えて立ち上がりボード前に立つ)
 えっと(笑)ま、別にこんな、提出されてるものをね、どうこう直しはしませんけれども…(と言いつつ、いきなり)「尊重し」がどこに係るかですね、「尊重し」「するとともに」「尊重し」「寄与する」(それぞれ赤で傍線を入れながら)結局「態度を養う」にこの「尊重」が係ってるんですよね(「尊重」から「態度…」に線を引いて繋げる)こうなってるわけですから、これ、あと(の文章)はよく分からないですから、一番大事なことをはっきりと主文として示すべきだと思うんですよね。ですから、「尊重する」「態度を養うこと」

 で、これ、どこの「伝統と文化」かよく分からないとすれば、ま、思い切って踏み込んで、ここに「日本の」(朱書しながら)、で、「伝統と文化」ってちょっと並列しにくい言葉なので「伝統的な」(朱書)という風に、ま、思い切って変えてですね、「日本の伝統的な文化を尊重する態度を養うこと」にすっきりさせて、で、「他国を尊重する」というところは「六」(朱書)で、項目のこれは「五」ですから、これは「六」でやってもいいんじゃないかとは思いますね。
 一番の問題はやはり、愛国心の表現ですけれども、そこは日本への愛着というのを、あのー深めるっていうような表現っていうのもあり得る、…愛着という表現とか他の表現が少し考えられたかな、と思いますね。

 この「国」(○で囲む)を「愛する」(同)、これを柔らかくするためにいろんなものが来ちゃったという感じですけれども。ま、一応、元にすっきり戻ってみるというのがいいかな、とは思いますけれども。
 ただ、60年近く経ってみて、まぁあのー(腰掛けながら)自分たちでもう一度ね、ま、考え直してみようということはね、僕はまぁ、気運としては時期的にはよかったかなという思いもありますね。自分たちのものをもう一度自分たちでという思いもあります。
<終了>

 で、こうなりました。

教育基本法改正案の齋藤改正案(第一章第二条―五)


 日本の伝統的文化を尊重する態度を養うこと。



   ※「他国を尊重し…」は六項へ
   ※ 愛国心は「愛着」などの表現に置き換え?(保留)

 「どうこう直しはしない」と言いながらのこの迷いの無さが清々しくも素晴らしい。コメンテーターたるもの無責任なまでに大胆不敵じゃないとわざわざブッキングした番組側も浮かばれない。
 これを見た自民党文教族齋藤孝を諮問機関に招き入れるとは到底思えないけれどね。文科相への道が近づいたのか遠のいたのか微妙だけれどね。
 これこそが、報ステのブッキングの妙と齋藤孝の真骨頂だ。
 私もぐだぐだしてられないな。頑張って本読もう。更新もしよう。そして次の僥倖を待ち侘びよう。


 ところで気になる夫の証言。
 録画開始前の番組冒頭、「金曜日おなじみの齋藤孝さんです」という紹介があったと言う。
 ホント?金曜日はいつも出ていたの? きゃー!久しぶり♪なんてはしゃいでいたのは私だけで、全国の齋藤ファンは淡々と普段通りの金曜日を楽しんでいたの?クロサギ見てる場合じゃなかったのか…


 ただ猜疑心強い私は「こんばんは、4月28日金曜日、今日のコメンテーターはおなじみ齋藤孝さんです」という文脈での「金曜日」「おなじみ」だったのではないかと踏んでいたりもする。
 それぞれどこに係っていたかで意味が全く変わってくるじゃないか。教育基本法改正案より、こっちに朱入れして欲しい…
 とりあえず、金曜チェックだ!それはニュースステーションだけどね。懐かしすぎて20代じゃ分からないだろうけどね…