齋藤孝の実践母親塾「言葉の力」は家庭で伸ばす


 斎藤孝の実践母親塾―子どもの能力を確実に引き出す!の第二弾。これはかなりさっくり読めます。どのくらいさっくり読めるかと言うと。

 健康診断へ行って来たのだけど、待ち時間に読もうと本書を携えて行ったら、思ったほど混んでいなくて、身長・体重・血圧測定→待合室→採血→待合室→採尿→待合室→内科検診・乳ガン触診→待合室→子宮ガン検診→待合室→骨密度検査→待合室→乳ガン検診(マンモグラフィー)→待合室→会計の全行程がたった午前9時から10時までの一時間で済んでしまった、その各待合の間に、大雑把に読めてしまったほどさっくりと。


 私ほど齋藤節に熟達すると、一行読めば十行先、一ページ読めば十ページ先の展開まで読めてしまうという高下駄分はあるものの、これはやっぱり読み易い。
 この読み易さは諸刃の剣で、広く齋藤孝を啓蒙するにはいいのだけど、その読み易さ故の誤読を誘う恐れも大いに孕んでいる。


 「今日からできる最強メソッド」の副題に偽りなく、ストップウォッチや電子辞書など具体的なアイテムも盛り込んだ、家庭での学習方法が多く提案されているのだけど、本書でバンソウ者(伴走/伴奏)としての親に求められているハードルは、実はものすごく高い。


 一緒に映画を観に行って、感想を言い合い質問をしてみる。
 ニュース番組を見て親子でキャスターごっこをする。
 3つのポイントカードを作る。
 3色ボールペンで線を引いてみる。


 どれも早速今日から実行できるし、なるほど、子どもの要約力や言葉の力を育てることが出来そうだ。
 でもこのメソッドの恐ろしいところは、良くも悪くも親の裁量に全てが委ねられてしまうというところ。


 二児の父である齋藤孝に寄る、現在進行中の実体験に基づいたありがたいメソッド。しかし、これは齋藤家だからこそ成立される教育法なのであって、もし私が学齢に達した子ども達にこれらの方法を実行するとしたら、「ここ、赤でOK?」「3つのポイントに絞れない…」と自信なくぐずぐずになってしまうんだろう。


 そして自らの確信の無さを埋め合わせるべく、分かり易い「ストップウォッチ利用法」のような自分の主観を試されない方法を拡大解釈して、その本来の目的を忘れて、手段に捕らわれてしまうという罠。
 齋藤孝の真意を汲んでいるならいいけど、方法だけが独り歩きすると、例えば育児系雑誌や奥様情報番組に抜粋の形で本書が紹介されたりすると、非常にまずい。


 ので、本書と併せて少なくとも三色ボールペンで読む日本語「頭がいい」とは、文脈力である。齋藤孝の勉強のチカラ!を読むように巻末の「齋藤孝からお母さんへの手紙」に書き添えるか、もしくは各メソッドについての副読本、例えば「齋藤孝と読む親子のための時事ニュース(季刊)」「齋藤孝の3つのポイントカード(家事編)」「同(外出編)」「同(コミュニケーション編)」など、続々刊行するとか、映画のコラム連載を始めて「おすぎが泣いた!」「ピーコが泣いた!」以上に「齋藤孝が要約した!」で集客力アップに貢献してみると、より親切かも知れない。